柚木麻子の小説「BUTTER」。名前の通りバターが物語の鍵となっている。
カロリーや脂質が何かと避けられる現代社会。その中にあって、この作品はバターの魅力を余すところなく表現している。
「バター醤油ご飯を作りなさい」。連続不審死事件の被告人・カジマナこと梶井真奈子は、拘置所へ面会に来た主人公の週刊誌記者・町田里佳にそう言い放つ。梶井はこれをバターの素晴らしさが一番よくわかる食べ方だと主張する。さらに海外の高級ブランド「エシレ」の有塩バターを使い、冷蔵庫から出したての冷たいままで、歯ごたえや香りを味わうべきと、己のバター論を滔々と里佳に教える。
そこから里佳と梶井は羊たちの沈黙よろしく、拘置所でバターの魅力に迫る連続講義に入る。たらこパスタ、塩バターラーメン、パウンドケーキと続き、時には出張で新潟グルメ編を挟むなど、食レポ小説かと思わせるほど食にあふれた作品だ。食の表現は素晴らしく、かく言う私もバターを使い始めたのは言うまでもない。
ここまでバターの話題しか出ていないが、ストーリーの本筋は、里佳が梶井の独占インタビュー取材を取り付けようとする話だ。その過程で、里佳が女性としてのキャリアや恋愛、人間関係に向き合う社会派小説となっている。
途中に中だるみを感じたものの、後半からの急展開で読む意欲を回復させた。果たして、この物語の結末はどうなるのだろうと思いながら読み進めることができた。そう、果たして結末はどうなるのか。ここでは詳細を明かさないが、個人的には今作の結末は玉虫色に見える。
里佳は後半のどん底から持ち直し、最後は周囲の人間の力も借りながら社会復帰の道を見出す。ただ、梶井の事件については最後まで真相に触れられていない。途中にそれらしき話は出ているが、明確ではないため自分の中では消化不良だった。
個人的にはストーリーに思うところがあった。だが、作品全体では秀逸な食の描写にそそられ、現代社会で悩む女性の姿には心を打たれた。読み切るには少々、時間がかかるかもしれない。時間に余裕がある時にじっくり読みたい作品。バターに興味を持った人はぜひ読んでほしい。



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