取材の基本が詰まった本「西南シルクロードは密林に消える」

 「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く」。本書はこのポリシーに持つノンフィクション作家・高野秀行氏の代表作と言えるのではないだろうか。シルクロードと言えば、誰しも世界史の授業で耳にしたことがあると思う。だが、本書で扱う西南シルクロードの存在は認知度が高くない。高野氏はこの西南シルクロードを中国からタイ、ミャンマー、そしてインドとたどる内容だ。

 本では全体を通して高野氏の手に汗握る体験が描かれている。日本にいては分からないゲリラ軍の日常やミャンマーの国境地帯の生活が興味深い。現地の協力者の物語がリアリティをより深堀りさせ、感情移入させられる。高野氏の筆致も見事だ。読むだけでその場の情景が目に浮かぶようであり、最後まで退屈せずに読み進められる。

 個人的に一番印象深かったのは、高野氏による人から人へとつながっていく取材の流れだった。自分も業界紙の記者を務める中、ネタ探しにはいつも苦心している。その中でいつも大事だと感じるのは人間関係だ。業界紙とは言え、気になることをいつもすぐに教えてもらえるわけではない。媒体に対する信頼、記者個人に対する信頼など、信頼の蓄積の成果の上に成り立っていると思う。

 そうした記者業を続ける中で高野氏の取材は圧巻だった。ゲリラ軍などの現地の人による紹介から紹介で一連の取材が進められる。危うい状況でも人に助けられながら乗り越える。これは高野氏のパーソナリティによるものだと思う。自分もこの姿勢を忘れず、常に人や組織、団体から信頼を得られる取材・執筆をしていきたい。

 また私は文庫本を読んだのだが、あとがきも惹きつけられるものだった。登場した協力者のその後について触れられており、本書を読み終えた人にとってはいろいろと考えさせられるものだった。ミャンマーは依然として情勢が不透明だが、もし可能であれば彼らのその後を知ってみたいと感じる。ちなみに高野氏は「イラク水滸伝」で植村直己冒険賞を受賞しており、なかなかに長編だが、機会があれば読んでみたい。

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